社会福祉協議会が日常生活費を管理することを、かたくなに拒否しながらも、私を含め、多くの行政の担当者より、あれやこれやと説得され、しぶしぶ2回目の面接まで承諾がとれていた。
そして、本日最終の第3回目の面接と契約日。役所の権利擁護の主査、保護課、社会福祉協議会、包括とやっぱり大そうなメンバーがそろった。自宅に入ると、テーブルが容易され、その上には、レースのテーブルクロスまでかけてある。ご丁寧に座布団まで準備され、受け入れ態勢が万全だった。説明と承諾、契約書へのサイン、通帳預けと何事もなくスムーズに進行できた。どうしたんだ?これは?と、あまりにもその素直さをいぶかった。
雑談を交えながら、午前中いっぱいのその面談が終わったころ、私の携帯電話が鳴る。泥棒扱いされ、出入り禁止となっている娘様からだった。
「どうでした?心配で心配で・・・・実は昨日、何年ぶりかに電話したんですよ。明日役所の人がくるから、お願いだから、『はい。お願します。』って返事してね。私のことは、何とでも言っていいから、明日だけは、お願いしますって言ってよ。一生のお願い!って電話しといたんですよ。そうですかあ・・・契約終わったんですね。よかったあ!」と電話口の向こうから、はずんだ声が聞こえてきた。
そうか・・・・本日のテーブルとレースのテーブルクロスは、娘様の電話を受けてのことだったんだと納得した。相変わらず、娘が貯金通帳や着物など全部泥棒していったと訴えてはくるが・・・・いつの日か、この親子が和解する日がこないだろうかと願う。一応は娘の言うことを聞いて、出迎えの体制を整えてくれた。娘様に、私も仲裁役で同行するから、一緒に会いにいきませんか?と提案するが、娘様もまた、まだ会いたくはないとの返事。認知症が言わせた数々の悪口雑言で、娘様もまた傷ついているのだとわかった。病気が言わせたことだと、いつの日か、受け入れてくださる日がくるだろうか・・・・?
来月、包括主催で、認知症サポーターの研修が予定されている。受講を提案すると、娘様が「そうですね。私が親を許せないのは、認知症そのものの理解が出来てないからなんですよね。ぜひ、出席させてください。」との返事。
困難事例ですと紹介されたが、家族がここまで協力的であれば、ちっとも困難だとは感じない。ただ、あらゆることに時間が取られるだけのこと・・・
そう、私達ケアマネが困難事例と呼ぶのは、家族が無関心でまったく協力がないこと。ケアマネは家族には決してなれないのだから、そこで、立ち往生してしまう。
宇野 恵子
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