認知症があり、妄想の激しい利用者が、最近、機能低下が進んでいる。今までは、ひげをきちんと剃り、立派な口ひげもはさみで毎朝お手入れしていたというのに、無精ひげが顔全体を覆い、、自慢の口ひげものびきっている。
そこで、訪問理容を考えたが、ちょっとまてよ・・・・・?妄想が出てきて、ナイフを使っている時に、変な妄想がでると、ちょっと困る。なにせ、「包丁はどこか?泥棒がいるぞ。」なんて物騒なことを言ったりする。包括職員だって追い返したもの。だから、普通の訪問理容を使うのは心配された。う~んと考えたときに、適任を思いついた。
私の近所で親しくしている人がいる。現在リタイアをしているが、経験50年の腕は確か。我が旦那も毎月自宅で散髪してもらっている。
「誰でもは頼めない人がいるのですよ。帰れ!ってどなられるかもしれないけど、なんとかボランティア精神で頼めないでしょうか?」
「ああ、いいですよ~。何かいいことしておけば、死んだら天国に行けるかもしれん。」と冗談を言いながら、承知してくれた。この明るいキャラはいいかもしれない。何がおこっても、理解してくれそうだ。
準備は整った。自宅を訪問し、まず、伸びきった髪とひげの処理をしてもらいましょうと言うと、以外にも「うん。」と頷いてくれた。ダンディズムを信条とする方だから、自分でも気になっていたのだろう。承諾をもらい、その場で、理容師に電話してきてもらうよう依頼した。
理容師が奥様を助手として伴い、訪問された。理容師の髪が真っ白だったもので、
「あんた、わしより、年上じゃないのか?」「とんでもない。まだ60ですよ。確かに髪の色だけは、お客様に負けますねえ。アッハハ」「ほう、わしより20以上若いのう。」
順調に作業はすすむ。ひげを剃る時も、ふとんにじっと寝ていてくれた。
そして、あざやかな腕を披露し、一丁あがり。ちょうどサービスしていたヘルパーからも「キャー、素敵ですぅ!!とほめられ、いそいそと洗面所の鏡を見に行く。そして、自分で確かめたあと、振り返り 「いいじゃない!」と言って、笑ったその顔が本当に素敵だった。口ひげは、くちびるの上でまっすぐに切られている。
こんな小さな成功で、幸せを感じる私って、お手軽だねえ・・・・あれっ?今日はまったく妄想発言がないぞ?!
宇野 恵子
コメント