認知症が結構進んで、要介護3の利用者がいる。娘様はカメラマンで活躍し、最近仕事の依頼がとても多いそうだ。月一回の面談日も「仕事が終わらないんですぅ・・・」という言葉をいつも耳にしていた。サービスはショートステイの利用だけだ。仕事で遠出をしたりするので、その間施設に預けている。
一人娘で、お母様の世話を一手に引き受けているが、自宅に連れ帰ると、夜間トイレが分からずどこで排泄するかわからないので、深夜のトイレもつき添えるように、ドアに紐をつけ、ドアがあいたら、自分も起きれるようにと、涙ぐましい努力をされている。
「どうも、浴室をトイレと思いこんでいるようで、浴室のドアをあけたら、てんこ盛りなんですう・・・」と言われた時には二人で笑い合った。認知症で困った母親であるが、とても愛しい眼で母親を見つめていることを私は知っている。利用者に、「娘様、仕事が忙しくてとても疲れているんですって。」と言うと、
「大丈夫?がんばれ、がんばれ!」と言って、娘の頭をポンポンとたたく。娘様は、困ったような顔をして、苦笑いしながら、母親に頷いている。そんな二人の情景をこの3年、ずっと見続けていた。今後も認知症がすすむと、在宅では無理でしょうし、仕事が出来なくなるからと、老人ホームへの入居申し込みをすすめたのは、1年ほど前。
本日、利用者と娘様と顔を合わせた途端、
「つい、30分前に、部屋があいたという連絡がきたんですよ。」と、娘様が息せき切って話された。私も喜び、
「わあ、よかったですねえ!入居早かったですねえ。これからは、自分に余裕がある時に、いつでも外泊という形でおうちに連れて帰ればいいですね。今まで、よく、お世話をされたと思いますよ。・・・・でも、そうなると、私は、今日でお別れだ。なんだか、切ないなあ・・・・」
驚いたのは、娘様。「ええっ?!どうして?どうして?」 施設に入居すれば、施設のケアマネに交代しなければならないことを説明する。
「ええ?そうなんですか?わあ、どうしょう・・・?どうしょう・・・?」と本気で悩んでいる。
ケアマネの仕事を始めた時からの最初の利用者。私の方が離れがたく、胸がキューンと鳴る。
3年分のお礼を言って、お別れした。
宇野 恵子
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